1. 「つながりすぎる社会」は、心をすり減らす
スマホを開けば、今この瞬間にも誰かが発信し、反応し、動いている。
その便利さは確かに魅力的ですが、同時に「離れてはいけない」という見えない圧力も生みます。私自身、夜にSNSを眺めているだけなのに、なぜか落ち着かなくなることがありました。通知が鳴っていなくても、心だけがずっとオンラインのまま、休むことができないのです。
谷川嘉浩氏の『スマホ時代の哲学』は、この状態を「つながりの過剰」として捉えます。
「つながらなければ不安。けれど、つながり続けると疲れる」。
そんな相反する感覚こそ、スマホ時代の孤独の入り口だと本書は示します。
💡ポイント:
つながることが目的化すると、コミュニケーションは浅くなり、自己の輪郭が曖昧になる。
2. 「孤独」を拒むより、受け入れる
孤独は悪いもの――そう感じさせる社会的な雰囲気があります。
しかし著者は、孤独は「自分を取り戻すための余白」だと言います。
たとえば、スマホを置いて散歩するだけで、少しずつ思考が自分のペースに戻っていく感覚があります。誰かの投稿に追い立てられず、ただ歩くリズムだけに耳を澄ませる。そんな時間が積み重なると、他者ではなく自分の声が聞こえるようになる。
孤独は、遮断ではなく回復のプロセス。
それを拒むのではなく、丁寧に受け止めることで、他者とのつながりも自然と整っていきます。
関連記事
3. 「スマホを使う」から「使われない」へ
私たちがスマホを見るとき、「開きたいから」ではなく「開かずにはいられないから」になっている瞬間があります。
通知もないのに手が伸びる、なんとなくSNSを眺め続けてしまう――これは意志ではなく習慣の力です。
本書は、その習慣に自覚的になる小さな工夫を提案しています。
- 夜はスマホを別の部屋に置く
- SNS を開く前に一呼吸おく
- 通知を必要最小限にする
これらはどれも些細なことですが、「自分の時間を奪われない」という感覚を取り戻す大きな一歩です。
また、著者は“比べられない時間”の価値を強調します。
趣味、反復練習、手を動かす作業――誰かの評価とは無関係な時間ほど、孤独は豊かになります。
💡おすすめ実践:
- 夜22時以降はスマホを触らない「デジタル休息時間」をつくる
- SNS を開く前に深呼吸して「今、本当に必要?」と問う
- 毎日15分、スマホから離れて“手を動かす”習慣をつくる
本書を読み解くキーワード対照表
『スマホ時代の哲学』には、スマホ時代の人間理解を支えるキーワードが繰り返し登場します。
整理して眺めると、著者の問題意識の全体像がより明確になります。
| ネガティブ側の概念 | ポジティブ側の概念 | 目安ページ |
|---|---|---|
| 常時接続(他者との過剰なつながり) | 没頭・集中(自分との関係を取り戻す) | 第3章前半 |
| 注意の分散(アテンション・エコノミー) | 思考の深まり | 第3章中盤 |
| 孤立(他者との断絶) | 孤独(自分との対話) | 第4章 |
| 外部刺激への依存 | 退屈を受け入れる力 | 第5章 |
| 他人との比較 | 趣味・反復練習 | 第4〜6章 |
まとめと次の一歩
スマホ時代の孤独は、人とつながる・つながらない以前に、 「自分との関係のゆらぎ」 から生まれます。
孤独を恐れず、スマホに使われない時間を持つことで、本当に大切なつながりが見えてくる。
明日からできること:
- スマホ断食時間を1日15分つくる
- 通知をひとつ減らす
- SNSを閉じて、身近な人に直接「ありがとう」と伝える
- 少しの時間でいいので、没頭できる趣味を続ける


コメント