心理療法のはじめに発達障害の視点

心 Spirit
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心理療法には多くの流派があります。

どれを選択するかは、援助者、被援助者(援助を受ける人)が自由に選べばよいのだと思います。

それでも、発達障害の視点があることが望ましいのではないかというのがこの文書を書こうと思った動機です。

医療との違い

すこし遠回りかもしれませんが、まずはこのあたりから。

私は医師免許は持っていないので正確な違いを言えているかどうかは分からないですが、医療では血液検査や画像検査などで見立てをして、病名が決まればそれに対応した治療が自ずと決まってくる場合が多い気がします。

漢方を選ぶかどうか等の選択肢があったとしても、見立ての方法はほぼ標準化されていて、それが教育されて、医師であれば一定の水準の判断基準があるという印象があります。

それに比べて心理の領域では、立場によって見立ても違い、そこから出てくる心理療法というのは、それぞれ異なったものになる気がします。

目指すものの違い

では心理療法家(心理療法を行う人)はもっと標準化された判断基準や対応方法を持つべきなのかというと、ある程度はそうでしょうが、一概にそうだとも言えない気がします。

そもそも医学が「治療」を目指すのに対し、心理学は「成長」を目指すのだという考え方があり、私も同感します。

治療が「正常な状態を想定し、そこから外れた異常な状態にある人を、正常な状態に戻す」ことを目指すのに対し、心理学は「現在よりよい状態になる」ことを目指す、という感じでしょうか。

心理療法が目指すもの

これは年令によって違ってくるでしょう。

授乳しているときに赤ちゃんが母親と目が合いにくいなら、成長過程で人に関心が向くような働きかけがあるとよいでしょう。この場合は、標準を意識する色合いが濃いかもしれません。

小さければ小さいほど、学ぶことは多く、対応も訓練的になる。尊重されるべき個性も、形成される途中だからです。社会に適応的な行動は、教えられるときに教えておいたほうが、その子どもにとって、その後が楽でになるでしょう。

ただし発達障害と呼ばれる状態は、すでに生まれた時点(生後数か月の食事等は影響する場合があるかも)で持っている特性であるため、ここはよく見て対応する必要があります。

学齢期になって不登校になったり、社会人になってからうつになったりという場合は、標準というものの意味が薄くなっていく。それまでに形成されてきた性格特性や、置かれた状況によって、現れる反応が千差万別になるからです。

大きくなってから標準に当てはめようとすると、無理が出てきます。

周囲が、家にこもらずに学校に行くように働きかけたり、自分から職場に馴染むように頑張ってみても、大きくなって様々な要因が絡んだ後では、なかなか思うようにいかない。悪くすると自死という選択をする場合もあり、注意が必要です。

最近、診療報酬で認められている(心理療法なのに保険診療が受けられる!)認知行動療法などは、効果のある心理療法ですが、まずは目指すところが妥当な地点なのかを見極めることは大事な気がします。

社会適応のみを目指すのではなく、その人に合った成長の形を考えることは、心理療法的に大切な視点だと思います。

発達障害の視点

多くの心理療法で、まずは見立てのために成育歴を訪ねることが多いでしょう。

そのとき、まず発達障害という観点で見てみて、その影響がありそうなら、その後環境とどう相互に作用しあったかが見やすくなりそうです。

そして、年齢が小さいほど、発達障害への対応が効果を発揮しやすいでしょう。

ADHDならば環境調整や働きかけの工夫が必要であるし、体内の神経伝達物質の問題であるなら医療の力を借りる必要がある場合もある。

自閉スペクトラム症であれば、人に関心が向くような対応を早期からするのが有効でしょう。

知的な発達が周りよりゆっくりな場合にも、特別な対応が必要になります。

愛着障害という考え方もあり、発達障害との鑑別が重要とされていますが、専門家でも鑑別が難しいようです。愛着障害と捉えて、問題行動に寛容になるより、気持ちを受け入れたうえで行動療法的に適切な対応を教えるほうが良い場合も多そうです。

大きくなってからは、発達障害があるなら、それをベースにした成長の形を考えていくことになるでしょう。

トラウマの視点

大きくなって重要性を増すしてくる視点に、トラウマの視点があります。

こちらは長くなるので別の機会に譲りますが、トラウマを受けたことが影響しているかもしれないという視点をどこかに持っておくことが大事という程度にとどめておきます。

まとめ

どんな心理療法を選ぶにしても、小さいときにその人の将来に大きく影響を与える、発達障害の視点を持っておくのがよいと思います。

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