単純化
『スマホ時代の哲学』を読んでいて、出てくるタームが多くて混乱したので、備忘録としてポジティブ(本書でよいとされるもの)・ネガティブ(その反対のもの)という二分法でバッサリ切り分けておくことにしました(こんな分け方をすることこそが本書の趣旨から外れることかもしれませんが、そこは置いておいて)。私の誤解があると思いますので、疑問を持たれた方は本書に当たってみてください。
読んでいて、「この言葉、何だったっけ?」と思ったときに振り返られるように、ページも付けています(主に最初に使われたページ)。大雑把な索引としてお使いください。
ネガティブ | ポジティブ | ページ |
モノローグ(私の独り言) | ダイアローグ(対話) | 9 |
スッキリ | モヤモヤ | 53 |
自分の頭で考える | 他人の頭で考える | 77 |
一問一答 | 知識と創造力 | 80 |
注意の分散、アテンションエコノミー | 孤立(没頭) | 130 |
スマホ、安易なネット配信 | 孤独(自分自身と対話する力、喪の作業) | 133, 142, 144 |
考える(「こうだ」「これだ」と理解する) | 感じる(「感情のしっぽ(理解したと思ったら、そこからこぼれ落ちていくもの)を捕まえる) | 159, 160 |
FOMO(Fear Of Missing Out; 見逃す/取り残されることへの恐怖、寂しさ) | 趣味(新世紀エヴァンゲリオンで加持リョウジが没頭しているスイカを育てること/碇シンジが渚カヲルと行うピアノの連弾で心地いい音を生み出すための反復練習/終わらない楽しさ) | 174, 186, 203, 329 |
安易な説明や議論 | ネガティブ・ケイパビリティ(結論づけず、モヤモヤした状態で留めておく能力; イギリスの詩人ジョン・キーツの概念) | 205, 206 |
気晴らし(いずれ死が訪れるという人間の悲惨な運命を思い出させる退屈や不安から目を逸らすこと; 例: ビリヤード、研究、戦争) | 退屈や憂鬱、不安から逃避するためだけに、あくせく刺激を求める生き方を避けるべきというパスカルの哲学 | 232, 238 |
ポストフォーディズム(工業製品や成果物を売りさばくことを念頭に置いたフォーディズム以降の、サービスや体験を中心とするロジックで構成された経済文化、 フレキシビリティ(柔軟性; いつまでも学び続け、いつまでも変化に適応し、いつまでも成長し続ける人材であること)、 自己啓発(個々人の状況を自己責任化する呪い) | 他者や周囲の声、ノイズ | 244, 245, 258, 260 |
「快楽的なダルさ」に浸る、 「やわらかい昏睡状態」になる、 自閉接触ポジション | 気分というモヤモヤに目を凝らすこと(≠ポジティブな心の声に従うこと) | 270, 279, 282 |
YouTubeやInstagramといいった情報呪術による不安や抑鬱の「清め」や「祓い」 | 退屈になってみること | 285 |
不安 | 孤独を楽しむ、自治 | 294, 298 |
行動レベルの無意識的な「反応」 | 思考レベルでの意識的な「想起」(反復→想起の移り変わりが「ワークスルー」) | 305 |
わかった気がする | 自分を、他人を知ろうと努力する | 311, 312 |
妄想分裂ポジション(人や物事の一部だけを見て関係を築き、曖昧さを許容せず明確に白黒付ける状態) | 抑鬱ポジション(人や物事に、良い面と悪い面が共存することを認めつつ、自身が対象に両義的な衝動を持つことに罪悪感や葛藤を抱いている状態) | 317, 318 |
気になるところをいくつか以下に
本のまとめ
この本の内容を一言でまとめろと言われたら、「いきなりパブリックにつながってばかりいずに、プライベートな享楽をしっかり追求することも必要なんじゃないか」ということになるでしょうか。(p.332)
仲間
なお、孤独だけでなく、仲間も大事という部分もありました。
根本的な意味で自分のことを認めてくれる人がいることの安心は、孤独においてあれこれ思考し、趣味においてあれこと試行錯誤する上で、欠かすことができません。(p.334)
「孤独の中にいる自分」と、「仲間とともにいる自分」の緊張関係。一人でいることだけで問題は解決しないけれど、一人でいること抜きに事態が好転することもありません。(p.337)
Q&A
増補改訂版には、読者からの反応に応じて、Q&Aが付いています。その中から、いくつか。
教育とスマホ
「子どもがスマホばかり見ていて心配です」(p.344)
の回答に
『子どもに「うまくネットとつきあってほしい」と望むのはいいですが、そう語る大人がスマホばかり見ていたら仕方ないですよね。大人がスマホ以外の何かを楽しんでいる姿を子どもに見せるとともに、子どもが楽しんでいることを面白がる姿勢をちゃんと見せることです。』(p.345)
まさに「そのとおり!」と言いたい回答。実践は難しいけど、この基本方針を忘れずに、ついスマホに夢中になっていてもこのフレーズに帰ってきたいなと思いました。
比較と嫉妬
「どうしてもSNSを見て他人と比べてしまいます」(p.348)
に対しては、
「他人との比較をゼロにすることはできないでしょう」と言いつつも、「比較を超えた欲望をどう育てるかという発想に転換するのがいいと思います」(p.349)
と続け、処方箋として『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』等が勧められます。これはオーディブルにないので、紙の本をしっかり読まなきゃ。
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