『弱キャラ友崎くん』を読んでいて、「コミュ力」というキーワードが心に残っていて、その「コミュ力」の文字が帯にあった』この本が目に留まりました。
平易でありながらも独特のキーワードを用いながら、コミュニケーションに難しさを感じる人に助け船を出してくれる本書について、紹介します。
「会話が続く人」へのスモールステップ
日常生活でコミュニケーションに難しさを感じる人は少なくないと思いますが、対人援助職に就く人の中にも一定数おられることでしょう。
そんな人にとって、分かりやすいタイトルで、思わず手に取って、開いてみたくなります。
厚さにして1.2cmほどの本の中身はオレンジ色を基調にしたカラーで、ポイントにラインが引いてあり、イラストで問題になる場面をイメージしやすくさせてくれ、読み進めやすい印象です。
いろいろな場面について、見開き2ページで対応策を説明してくれていて、実用的です。
『弱キャラ友崎くん』のように、1週間はこのことを頑張ってみようという短い目標にするとちょうどいい感じです。
キーワード
著者の竹田さんは今までの著作の中でも、平易な日本語の中から、特定のキーワードを使って話を紡いでいってくれます。
今回は「言葉かけ」。その「言葉かけ」に力を宿すための心持について説明したうえで具体例に移っていきます。
説明の中では、「決めつけ」という言葉を使ってラベリングがもたらす危うさを話し、「こうあるべき」の危険性を説きます。
持ち場
「持ち場」は以前の著作でも取り上げられたキーワードで、
人間関係の悩みは、相手の持ち場に踏み込みすぎるか、自分の持ち場を相手に委ねてしまうかによって生じている(p.24)
とし、自分も相手も尊重したやり取りの大切さを強調します。
承認
「承認」も大切なキーワードです。
こちらの言葉かけを相手に受け取ってもらうには、相手の言い分や気持ちをいったん承認する。(p.31)
言われれば当然なのですが、明文化してもらうと再認識できます。また、
相手の言い分や気持ちをしっかり受け取ったのであれば、それを言葉として表さなければ相手に伝わりません。(p.33)
も、耳の痛い話です。「こんなことは言わなくても分かっているだろう」でよく事故を起こす自分を振り返り、肝に銘じたいところです。
価値
本当にやりたいことのページでは、「本当にやりたいこと」の可変性について書きましたが、ここでは支援者を内側から勇気づける力として語られます。
こうした時代に、支援者を内側から勇気づけてくれる力があります。それは、「自分の大切にしたい価値」です。(p.36)
その実例として、退職した衣料品店が世界企業となる中、自分が始めた古着屋が鳴かず飛ばずとなった友人が後悔しないのは「自分の大切にしたい価値」にそって働いていたからだという話を挙げます。
大切にしたい価値は、あなたの言葉かけにきっと力を宿してくれます。(p.37)
と「言葉かけ」のパワーアップ方法を教えてくれます。
あとがき
それまでの説明でも出てきましたが、分かりやすいハウツー本のように見えて、あとがきでは「会話」から視野を広げ、「分断の時代」や「社会的排除」をとりあげ、「生産性」や「効率」を優先するあまり、弱者に対する排除の論理が広がる現代社会にまで射程が及びます。
弱者とはかつての自分やいつか訪れる自分であるとも言い、排除が自分たちに及ぶという警鐘を鳴らしています。
そして、誰にとってもい心地のよい社会を作るために、会話を止めることなく、会話を続かせる力を一緒に育てていこうと結びます。
どうでしょう。会話に苦手感を持つ方、ちょっと読んでみませんか。
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