限られた時間の中で仕事を効率よく進めることは、
仕事以外の時間――とくに「休日」を充実させるためにも欠かせません。
それは分かっていても、
いざ仕事を始めると、なかなかエンジンがかからない。
やっと調子が出てきたと思ったら、もう時間切れ。
私自身、ずっとこの「出だしの重さ」と「時間切れ」に悩まされてきました。
そんな中で、その見方を大きく変えてくれたのが、
『世界の一流は「休日」に何をしているのか』 という一冊でした。
「休日のために働く」という逆転の発想
この本で繰り返し語られているのは、
「休日を本気で楽しむ人ほど、仕事を上手に切り上げる」 という考え方です。
以前書いた「スマホ時代の哲学――孤独とつながりのあいだで考える」でも、
趣味や余白の時間が人を支える、という話に触れましたが、
本書ではさらに踏み込んで、
本気で趣味を楽しみ、真剣に遊ぶことが、偶然の出会いを引き寄せる
と述べられています。
そのためには、
「休日のために、仕事をどう終えるか」を考える必要がある。
つまり、仕事は休日の敵ではなく、休日を支える準備だという発想です。
途中で終えることで、次が始めやすくなる理由
本書の中で紹介されていたのが、
心理学で知られる ツァイガルニク効果 です。
人は、
- 完了したことより
- 未完了のことの方が、強く記憶に残る
という現象です。
行動経済学の分野でも、
作業を中断すると「気になって仕方がなくなり」、
その違和感を解消するために、次の行動が早まることが知られています。
つまり、
あえて仕事を途中で終えることで、次回の初速が上がる
というわけです。
「不便さ」が教えてくれた、切り上げの効用
私は地方に住んでおり、
多くの人が車通勤を選ぶ中、環境面を考えて公共交通機関を使っています。
ただし、便数は1時間に1本ほど。
時間までに乗らなければならないため、
「もう少しで終わりそうなのに……」
というところで、
仕事を強制的に切り上げることが何度もありました。
正直、ずっと不便だと感じていました。
しかし振り返ってみると、
次に仕事に戻るとき、最初から始めるより、明らかに取りかかりが早い。
この本を読んで、その理由が腑に落ちました。
今では、
- 「切り上げなければならない」ではなく
- 「次に取りかかりやすい区切りを、どこに作るか」
という視点で、
積極的に途中で終えるようになりました。
不便だった習慣が、
「仕事を継続しやすくする仕組み」に変わった瞬間でした。
ポモドーロ・テクニックが機能し始めた理由
これまでポモドーロ・テクニック(25分集中+休憩)も使ってきましたが、
「もう少しやりたい」という気持ちが勝って、
タイマーどおり切り上げられないことも少なくありませんでした。
ところが、
「途中で終えることが、次を楽にする」と理解してからは、
25分で止めることに抵抗がなくなりました。
結果として、
次の25分にスムーズにつながる。
時間管理のテクニックが、ようやく腑に落ちた感覚があります。
作家たちも実践していた「書きかけで終える」知恵
この考え方は、
創作の世界でも語られてきました。
村上春樹は
『走ることについて語るときに僕の語ること』の中で、
もっと書きづけられそうなところで、思い切って筆を置く
と述べています。
アーネスト・ヘミングウェイも、
同じように「書きかけで終える」ことの効用を語っていたそうです。
長く仕事を続け、大きな成果を残している人たちは、
続けるための工夫を自然と身につけているのでしょう。
無理せず、継続するために
仕事人生は短距離走ではありません。
大切なのは、
力を出し切ることより、続けられる形をつくること。
時間が来たら、きっぱり終える。
そして、次に始めやすい状態で区切っておく。
それだけで、
仕事も、休日も、少しずつ軽くなっていく気がしています。
読後に残った、もう一つの示唆
本書には他にも、印象に残る指摘がありました。
- 「自己肯定感」が他人との比較なのに対し、
「自己効力感」は自分の力への信頼であり、比較を必要としない - 読書はインプットで終わらせず、
アウトプットや実践につなげてこそ意味がある
いずれも、
「無理をしないで続ける」ための視点として、
心に残る内容でした。

コメント